イノベーションを起こす経験学習

2018年度の新入社員研修

今年の春の新入社員研修は、約2カ月間に渡る教育機会に携わることになりました。

ひとつの企業で新入社員の皆さんと約2カ月間共に学習する機会は、なかなかありませんので、大変貴重な機会でした。

キーワードは“経験”

これまでの新人研修であれば、ビジネスマナーやビジネスマインドの座学を学び、一日一日でのテーマ完結がオーソドックスな研修スタイルでした。

しかし、今年の新しい取り組みとしては、2カ月間の中で“自ら考えて動ける人材の礎をつくる”というコンセプトの研修運営を行いました。

第1タームは、①やってみる(まず自ら学ぶ)→振り返る(内省)→フィードバック(基本のインプット)→④実践(再度やってみる)というサイクルです。

コルブ(Kolb,1984)の経験学習モデルの教育実践版といったところです。

このような研修プログラムに至った経緯としては、現在の新社会人の人材は、勉強はできるが「まじめで、おとなしい」方が多いと言われています。その「さとり世代」は、不況下の社会環境の中で育ちましたので節約志向が高く、ITが浸透しきっている環境で育っていますので、物事を合理的に考える習慣がしみついています。回り道をしてでも、将来のために地道に学習するといったことはあまり得意ではありません。

しかし、基礎的な学習は行っておりますので、明確に指示を出したことに関しては、言われたとおりに行ってくれます。それで十分という方もいらっしゃるかもしれませんが、この厳しい市況の中で求める人材像は日々高まりますので、勿論企業側の要求水準も高まります。

一方企業側としては、これだけ成熟している社会環境で育ってきている世代は、以前のように「とりあえず黙ってやってみろ」という機会提供では納得できませんので、対応に苦慮します。

一方的な対応をしていると企業は求心力を失い、あっというまに新入社員の離職に繋がりかねません。

そのような問題意識がありますので、体系立てた経験学習を提供していきたいということに至ったのです。

企業での経験学習は本当に必要か?

それでは、当社も行っております教育プログラムの“経験”“体験”がなぜ必要であるのか、教育研修にわざわざ設計する必要性があるのかどうか、他の事例などもふまえながら、必要性をお伝えしていきたいと思います。

思考停止サイクル(イノベーションの妨げ)

これまでの人材育成の議論には、「組織の外部」での教育機会は範囲外であって、中心のテーマとしては扱われてきませんでした。

教育は、既知の情報を先生や上司から伝え教わるものでした。しかし、グローバル化は進み、近年の企業間の競争は激化しています。

その中で競争力を維持するために、イノベーションの受容性は日々高まっています。イノベーションの重要性は認知していながらも、日本の企業の組織風土は相対する組織風土に陥っているのかもしれません。

企業は

①組織風土(企業は長年かけて、言葉に表すことができない習慣、行動パターンなどが出来上がる
②細分化された業務(厳しい市況の中、合理化、効率化を極限まで進めた細分化された業務の遂行が行われている。現在進行形)
③減点主義(厳しい市況であることを分かっている社員は、なんとか企業に貢献しようと動いてはみるが、成功の確率は下がるばかり、なかなかうまいこと行かない。既成概念の中で動くことを好む上司や会社。枠の外に出ての活動はたたかれるばかり)
④褒められるのは目立たないこと(上司が好むのは、言われたことを従順に黙って従うこと)
⑤思考しない人材モデル(どんなに頑張っても叩かれるのであれば、思考するのは止めよう。頑張るのはやめよう。言われたことだけを淡々とこなす人材になっていく)

という組織風土を作り上げている。

【思考停止サイクル】

製造の現場でも同様のことが行われています。

“製造現場の分業化が進むと「マニュアルに従えば自分の担当作業はこの範囲の精度でいい」とみんなが思いがちだ。結果、事故が起きたり、不良品が出たりする。また、問題があっても従業員も気づかない。気づいても言い出さないようになってしまう。いわば思考停止状態だ。日経産業新聞.2004.8.2”

会社を出て外部で学習をする

イノベーションを促進するためには、普段とは異なるものの見方をすることや、普段と異なる知識や価値観、完成に触れることが必要です。これらを行うために、組織の内部だけに目を向けていては不十分で、組織の外部の活用に注目が集まっています。

 “館野泰一(2017)は、イノベーション活動を次のように述べています。イノベーションを起こすためには、「同じ軌道内での量的な拡大」では不十分であり、「新たな軌道への変更」が求められます。これは非常に難しいことです。「新たな軌道への変更」を行うためには、まず自らが前提としている価値観を相対化する必要があります。これは、以前の価値観との衝突を引き起こす可能性も含まれます。ただ、組織に慣れればなれるほど、このような活動は難しくなります。”

“また、中原淳(2012)氏が指摘するように、人は組織に慣れていくことで、組織への過剰適応や能動的怠惰に陥り、最終的には「文化的無自覚性」の境地までにいたる可能性がある。”

組織の外に飛び出しての学習が求められるのは、このような背景からです。

組織を飛び出した教育機会でイノベーションを!

特に、様々な地域での体験学習プログラムでは、異なる価値観をもった他者と出会います。

サントリー労働組合様などが参加されている五感塾というプログラムでは、“一隅を照らす人々との志の交流”を教育機会として提供しています。

そのような出会いから、自分が普段前提としているか価値観を顕在化させて、その価値観に刺激を与えます。

そのような外部での機会から、自らの組織に戻ることによって、従来の慣行、しきたり、思考パターンを打破できる可能性を高めることができるのです。これが注目される理由です。