【コラム】気候変動と企業

■SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」

 SDGsについては第一回で述べた通り、持続可能でより良い世界を、世界全体で目指していこうという世界の共通目標であり、その13に「気候変動に具体的な対策を」とある。気候変動は、日々私たちの生活とともに進んでいってしまっている。これは世界中で対策を行っていく必要があるほど深刻なのである。

 現在の地球では、気候変動によって自然災害や熱中症のリスクの増加、農作物の不作等が起こり、私たちの生活にとって深刻な問題となっている。気候変動の原因の一つとして考えられているのは、私たち人間の活動によって二酸化炭素が排出されることで進む、地球温暖化である(※1)。

 18世紀後半の産業革命以降、石油や石炭、天然ガスなど化石燃料をエネルギー源としている。化石燃料を燃やすことで二酸化炭素が排出されている。産業の発達によって私たちの生活には便利なモノがどんどん増えてきており、モノを作る工場や、それらを私たちの手元に届ける飛行機・車・電車などの運輸も増え、二酸化炭素の排出は進むばかりであった。私たちの生活の利便性が上がるのにともない、二酸化炭素の排出を加速させてしまっていたのである(図1)。環境省の「地球温暖化の現状」において報告されている温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測から見た地球の二酸化炭素の濃度変化を表したものが図1である。

図1 「GOSAT(温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」)による世界のCO2濃度分布観測結果」(JAXA/NIES/MOEのデータを元に環境省作成のものを引用)

 また、二酸化炭素を吸収固定し地球温暖化防止に大きく貢献するとされている森林についても、農地への転用や、燃料用木材の過剰な採取等により面積を減少させてしまったことも二酸化炭素が増えた原因と言われている。そして森林の減少等から、減少・絶滅する動植物も多く、生態系にも大きな影響が出ている(※2)。

 そこで国際的な合意である「パリ協定」(※3)では、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して2℃未満、できれば1.5℃未満に抑えることを目標とし、世界各国で「脱炭素社会」を掲げている。そして日本でも2020年10月、「脱炭素社会の実現(カーボンニュートラル)」を目指すことを国として宣言し、いよいよ大きく動きを進めたのである(※3)。

 身近なもので言えば、自動車はガソリンに代わる燃料をもとに動く電気自動車が増えている。カーボンニュートラルの一環として、2030年前半までにはガソリン車の販売を全て廃止する目標が掲げられ、二酸化炭素の排出を抑えたハイブリッド車や電気自動車などの次世代車へ移行するとしている(※4)。また、買い物の際にはマイバッグを利用し、プラスチックごみを抑える活動も進んでいる。普通に生活をしていても、いたるところで環境に配慮した対策を目にすることができるようになった。

■気候変動と企業

 地球の未来に対して、国、地域、企業として脱炭素社会への移行に向けた「緩和策」と、進んでいく気候変動の影響を回避・軽減する「適応策」の両方に取り組む必要がある(※5)。緩和策と適応策の関係性を表すのが図2となる。気候変動から受ける企業への影響は個々の企業の拠点や事業内容によって異なるが、今後気候変動の影響の拡大が懸念される今、影響を回避・軽減するためには自らの事業活動の特性を踏まえ、主体的に対策に取り組んでいくべきなのである。

図2「緩和策と適応策が対策の両論」(環境省作成のものを引用)

 そして、ESG(環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance))の3つの要素に配慮して日々の企業活動を行っていく企業に対しての、ESG投資が広がっていることは第一回第二回で述べた通りである(※コラムのリンク)。企業としてESGへ配慮することは、社会的信頼を獲得する要素でもあるだろう。どの分野の企業においても、未来志向の考えにシフトせず今までと変わらない活動を進めていくことは、時代に反するとともに、企業の存在価値にも疑問を持たれてしまうのではないだろうか。

 アンドリュー・ウィンストン氏は、企業が本格的な変革を推進するために注力するべきアクションの一つとして、「サプライヤー、顧客、従業員に働きかけて変革を推進する」という考えを述べている(※5)。

 企業は、株主、従業員、顧客等様々なステークホルダーを持っていて、それぞれとの関係から成り立っている。企業として問題意識に取り組むこと、活動をしていくことは、ステークホルダーにも影響を及ぼす。ステークホルダーの意識を変えていくことが出来るのである。そして企業側からすれば、企業にとって大切なステークホルダーから、未来志向をしっかりと持った企業であることを理解してもらい、更に企業への信頼を深めることにもつながる。

■今、企業にできること

 日本ではあまり聞きなれないかもしれないが、世界で「Bコーポレーション」という認定を受ける企業が増えている。アメリカの非営利団体「B Lab」から生まれた認証制度で、Bは「Benefit(利益)」を意味し、株主だけではなく、従業員や顧客、社会や環境といったステークホルダーに対する利益を考える活動をする企業を認証するものである。その企業の扱う製品やサービスを越え、その背後にある事業全体を対象にした数少ない認証制度である(※6)

 日本の食品業界で初めて認証を受けた「ダノンジャパン」では、ホームページを通じて、様々なステークホルダーに配慮した取り組みを進めていることを伝えている(※7)。また、ダノンジャパンの長谷川氏はBコーポレーションという認証を受けることのメリットとして、「人材確保」と「取引先や顧客から信頼を得られること」の二つをあげている。社会にプラスの影響を及ぼす企業で働く意欲が高い若い世代を引き付けやすくなる、企業としての社会的信頼度の向上を見出している(※8)。また、Bコーポレーション日本事務局の山崎氏は、認証を受けることについて、ESG投資の中でも、社会・環境に貢献する技術やサービスを提供する企業に対しての投資である「インパクト投資」を呼び込むことへの期待があるという。

 企業の扱う製品やサービスを越え、ステークホルダーとの関係性を重視する活動が、今後の未来に向けて更に必要とされてくるだろう。

参考

※1「民間企業の気候変動適応ガイド-気候リスクに備え、勝ち残るために-」(環境省)
minkan_tekiou_guide.pdf (nies.go.jp)

※2「日本の気候変動とその影響」(環境省)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/rep130412/pamph_full.pdf

※3 パリで行われた国連気候変動枠組み条約会議。2015年に採択され,2016年に発効。
2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省 (mofa.go.jp)

※4「政府が「2030年ガソリン車禁止」を打ち出した訳」(東洋経済)
https://toyokeizai.net/articles/-/394007

※5「気候変動をイノベーションの機会に変える」(アンドリュー・ウィンストン)
気候変動をイノベーションの機会に変える ユニリーバ、P&G、ネスレ、ダイムラー…… | アンドリュー・ウィンストン | ["2020年8"]月号|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー (dhbr.net)

※6 「世界標準「BCorp」を知っていますか」(朝日新聞GLOBE)
世界標準「B Corp」を知っていますか アジアで広がる「良い会社」認証:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)

※7 「社会と環境の共存」(ダノン・ジャパン)
社会と環境の共存 | ダノンジャパン (danone.co.jp)

※8 「ダノン、「Bコープ認証」で若者取り込む」(日経ESG)
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/news/00102/

※図1 地球温暖化の現状と原因、環境への影響|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。(環境省)
地球温暖化の現状と原因、環境への影響|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。 (env.go.jp)

※図2 「民間企業の気候変動適応ガイド-気候リスクに備え、勝ち残るために-」(環境省)
pamph_full.pdf (env.go.jp)

担当:原